Personal tools
You are here: Home 生物 高校生物 春の里山
Document Actions

富山県の春の里山

by seibutsu last modified 2008-03-24 12:37
はじめに

里山の観察(春の動植物)

 富山県内の里山には、コナラやクヌギなど、昔から人が利用してきた落葉広葉樹(秋に葉を落とす)が多く見られる。天然林を伐採した後に自然の回復力により再び森林にもどったもので、「二次林」とも呼ばれる。
 数十年前までは、どこでも薪や炭などの供給源として里山を利用し、再び森林として回復させるということを繰り返していた。
  このような落葉樹の里山は、スギ林などの人工林に比べ、植物の種類が多く、生息する動物も多様である。また、土壌にはミネラルや養分が多い。その成分が溶けた雨水は、水田で稲を育て、海で海藻やプランクトン、魚を育てるための養分となる。生態系では、としても重要な役割を果たしている。漁師さんが、山にドングリの木を植える活動をする理由もそこにある。
  里山には、動植物の相互作用や生態について、実際に観察し理解を深めるための地域教材が豊富にある。その一端を紹介する。

1 春植物
  (春のはかない命:スプリングエフェメラルSpring ephemeral) 

  ミズナラ、コナラなどの落葉広葉樹林帯の林床には、雪解けと同時に地上に葉を展開させ、開花結実し、春の終わりには地上から姿を消してしまう草花があり、これらを春植物という。また、早春の短い期間しか地上に姿を現さないことから、スプリング・エフェメラル(春のはかない命)とも呼ばれている。からだの割に花が大きく目立つ姿は、短期間に受粉を済ませ種子を残す高山植物に似ている。

県内の代表的な春植物

 ニリンソウ

ニリンソウ(キンポウゲ科)

多年生の草本。生育環境はイチリンソウに似ているが、花の時期はやや早く、3月頃から開花し始める。名は2つの花をつけることが多いことに由来する。花弁に見えるのは、がく片である。

 イチリンソウ

イチリンソウ(キンポウゲ科)

多年生の草本。4月の後半から茎の先端に1つの花を咲かせる。斜面下部などの刈り取りが行われるような場所や、北向きの斜面などに生育する。花弁に見えるのは、がく片で、5~6枚ある。

 キクザキイチゲ

キクザキイチゲ(キンポウゲ科)

 草丈15cmほどの多年草で、落葉広葉樹林内や林縁で群生する。3出複葉の葉が輪生し小葉は羽状に深裂する。花弁状のがく片は淡紫青~白色で、花が菊に似ることで名がついた。

 コシノコバイモ

コシノコバイモ(ユリ科)

草丈10cmほどの多年草で、対生する2枚の葉と輪生する3枚の葉がある。薄緑色に黒紫色の斑点を持つ釣り鐘状をした目立たない花を1個つける。花は外花被片3枚、内花被片3枚からなる。

 カタクリの花

カタクリ(ユリ科)

種子が発芽し7~8年間は、花が咲かず葉だけを広げ、鱗茎に栄養を蓄積する。その間に鱗茎の位置は徐々に深くなり、開花する大きさになる頃は20~30cmの深さにまで達する。

 ヤマエンゴサク

ヤマエンゴサク(ケシ科)

漢方薬の「延胡索」からついた名前。球根(塊茎)が浄血、鎮痛の薬効があるとされる。同じケシ科のムラサキケマンに比べると、淡い青紫色の花はどことなく気品が感じられる。

 林床はカタクリが群生
 カタクリ群生

  カタクリは、種子が散布されると翌春小さくて細い葉(子葉)を出す。さらに翌年には1cmほどの葉、次の年は2cm、3cmと年々葉を大きくしていき、7~8年目にようやく2枚の葉を出し花をつける。コナラなどの樹木がまだ芽吹かない間に、林床に届く光を吸収し、養分を地下の鱗茎に貯め込む。そうやって、発芽してから数年後にやっと花を咲かせることができる。成長した個体の鱗茎は地下20cmほどの深さになり、寿命は約30~40年ほどだと言われている。

カタクリ01

2 ギフチョウ・・・・・春植物の受粉を助ける蝶

ギフチョウ
(鱗翅目 アゲハチョウ科 ギフチョウ属 学名:Luehdorfia japonica Leach)
学名に『japonica日本の』とあるように、日本の固有種である。落葉広葉樹林で、幼虫の食草であるウマノスズクサ科のカンアオイやフタバアオイがある場所に生息する蝶。卵はこれらの食草に産みつけられ、3月下旬~5月下旬頃までに羽化し成虫になる。早春の里山で、カタクリなどの春植物にとまり蜜を吸う姿は、まさに「春を告げる女神」と呼ばれるのにふさわしい。

カンアオイ

カンアオイ(ウマノスズクサ科) 
徳川家の家紋で有名なフタバアオイと同じ仲間の植物。種子をアリに運ばせ分布を拡大するため、分布の移動速度が遅く、300万年かけ太平洋側から移動してきたと考えられている。地方によって様々な種に分化している植物で、早月川を境に、西部にはクロヒメカンアオイ(クビキカンアオイ)が分布していない。写真の右下は花。

 ギフチョウの分布

 日本にはギフチョウとヒメギフチョウが生息しているが、その分布域はルードルフィア・ライン(ギフチョウ線)と呼ばれる境界によって東西に異なり、その境界線は冷温帯と暖温帯の境界線とほぼ一致している。このことからも、ギフチョウが自然環境と強い結びつきを持った生物であると言える。

  卵からふ化した幼虫の色は黒く、ふ化後4回脱皮し、夏に終齢幼虫になると落ち葉の下で蛹(さなぎ)になる。蛹のまま越冬し、春の雪解けを待って羽化する。成虫の寿命は約1ヶ月ほどで、雌は交尾後、カンアオイの若葉の裏に10個前後の卵を生み、数日で100~200個ほど産卵すると言われている。

 ギフチョウ02 ギフチョウ交尾
    羽化したばかりのギフチョウ        交尾しているギフチョウ

3 植物と昆虫の共存共生(花粉の運搬や種子の散布を動物に託した被子植物)

(1)受粉

  被子植物の花は、昆虫との共生を選択し生み出された器官だと言える。被子植物が繁栄すると、草食恐竜の主食であった裸子植物は北方へと追いやられ、やがて恐竜は衰退し、ついには亡んでしまったと考えられている。
 スギやヒノキなどの裸子植物は風で花粉を飛ばし受精させる風媒花なので、遠くまで花粉を飛ばすためには、花粉を乾燥させ、木の高さをより高くする必要がある。一方、被子植物は虫媒花なので、背丈を高くする必要もなく、とても経済的だった考えられている。

カタクリ花の構造

  カタクリには花粉を運んでくれる昆虫を引き寄せるための様々な工夫がある。チョウが好む赤色光、ハチが好む青色光を反射する大きな花被片(花弁とガクの区別がつかない)、その基部には多量の蜜を蓄え、突き出た雄しべは昆虫がとまれるようになっている。
 カタクリは、自分の花粉が自分の雌しべについても種子ができない「自家不和合性」の植物である。両性花の半数以上が持っている性質で、繁殖力や適応力の低下を防ぐための性質だと考えられている。

(2) 種子散布

  植物が広い範囲に種子を散布するには、かなりの工夫が必要である。種子に綿毛や翼を付け風で飛ばしたり、トゲで動物の体にはり付いたり、その仕組みや方法は様々である。カタクリは花粉の媒介だけでなく、種子散布にも昆虫との共存共生を選択した植物である。
 それはアリを利用する方法である。カタクリやスミレ、カンアオイの種子には、エライオソーム(種枕(しゅちん))という白い付属体がくっついている。この付属体は、アリを誘引する物質を含みエサにもなる。アリはせっせと種子を巣の中へ運び、エライオソームだけを食べると、種子はポイッと捨ててしまう。こうして種子を散布し分布域を広げる。こうした仕組みを備えた草花はアリ散布植物といい200種ほど知られている。更に被子植物は、『おいしい果実』を準備することで、種子散布において鳥やほ乳類とも共生関係を築いた。そのことで、ほ乳類は今のように繁栄できたとも考えられている。

アリ散布植物

4 里山の共生関係

春植物のカタクリ、その受粉を助けるギフチョウ、ギフチョウの食草であるカンアオイを例に、その共生関係など相互作用をまとめてみよう。

相互作用

5 里山の樹木

里山構造

  森や林では様々な植物が光と空間をめぐり「棲(す)み分け」し、その結果一般には階層構造が発達しています。 森林を眺める場合、高さによって各階層ごとに、どんな種類の樹木があるか観察するとその森林の特徴がよく分かります。

ボタン2  雑木林の観察のページを見る 

 県内の里山では、亜高木層(3~6m)、高木層(6m以上)では、コナラやミズナラ(ブナ科)が優占している。これらは冬になると葉をすべて落としてしまう。
 一方、低木層(3m以下)には、ユキツバキやヒサカキ(ツバキ科)、ハイイヌツゲ(モチノキ科)、ヒオアオキ(ミズキ科)、シロダモ(クスノキ科)などの常緑の低木が多く見られる。本来常緑樹は亜熱帯起源の植物なので、直接冬の外気にさらされると凍結し枯死してしまう。しかし、これらの低木は、背が低く、枝がねばり、地を這い枝分かれするという特徴を持ち、その「しなる枝」は雪の布団に守られ厳しい冬を越すことができる。里山で見られる常緑樹の低木は、過去の寒冷化に伴い多くの常緑樹が南方に下がっていった中で、日本海側の多雪地帯に適応した植物(これを日本海要素という)が多い。

里山低木 

5 春に目立つその他の植物

シュウジョウバカマ 

ショウジョウバカマ(ユリ科)

ユリ科の多年草。雪解けとともに開花する。花が赤くなることで能の猩々(しょうじょう)の赤い頭に見立て名がある。葉の先端に不定芽をつくる。

シュンラン

シュンラン(ラン科)

常緑の草本。東洋ランの代表的な種。明るい二次林に生育していることが多い。和名も春に咲くランなので春蘭。

チゴユリ

チゴユリ(ユリ科)

茎の先端に通常1つの白い花を付ける。果実は黒く熟す。名は稚児百合であり、小さくてかわいいことによる。

ユキツバキ 

ユキツバキ(ツバキ科)

雪に適応した常緑の低木。雄しべが筒状にならない点がヤブツバキと異なる。ユキバタツバキはヤブツバキとの中間種。

キブシ

キブシ(キブシ科)木五倍子

キブシの果実を五倍子の代用として利用した。春一番に花を咲かせ、茶花として利用される。

雑木林と人工林に戻る

高等学校のトップページに戻る

生物の部屋のトップページに戻る

 

Powered by Plone CMS, the Open Source Content Management System

This site conforms to the following standards: